邦画「雨あがる」を観た。
故黒澤明監督が温めていた脚本を黒澤組スタッフが映画化した作品。
剣の腕がたつ身でありながら志の高さ故、どこに仕官しても長続きしない流浪人とその妻が、
仕官先を探す旅の途中、豪雨で水かさが増した川そばの安宿で足止めをくう。
他の泊り客も同じく貧しい人々ばかり。
長雨で仕事に行けずクサクサして諍いばかり起きる宿の状態を見かねた浪人は
禁じられた賭け試合で得た金で、泊り客に一夜限りの酒宴を提供する。
この酒宴にて互いに触れ合う機会を得、心休まった泊り客たちは
やがて雨があがり水かさが減った川を前に
浪人に感謝の言葉をかけながら散り散り川を渡って旅立っていく。
その一方で、宿泊していたこの町で浪人の腕前が城主の目にとまり、
仕官が叶うかと思われた矢先
賭け試合をしていたことが暴露され仕官の道はとざされてしまう。
「また次を探せばいいさ♪」と雲助に荷物を預けて川を渡り
陽気に旅立っていく浪人夫婦。
浪人が「何をやったか」ではなく「何のためにやったか」
その意味の重さを理解した城主が、やはり雇いたいと追いかけるが・・・
見返りなど期待できずとも親切を惜しまない高邁な精神を
泥まみれの貧しさの中に「掃き溜めに鶴」的表現をした秀作。
主演の浪人役には名優宇野重吉氏のご子息で
「ルビーの指輪」等歌手としてもご活躍の寺尾聰さん。
浪人の妻に、ナレーターとしても才能を発揮の宮崎美子さん。
主人公と出会う城主に三船敏郎氏のご長男、三船史郎さん。
三船美佳さんの異母兄にあたる方。
城主の奥方には作家檀一雄氏のご息女でご自身もエッセイリストであられる檀ふみさん。
他、仲代達矢さん、原田美枝子さん、松村達雄さん、井川比佐志さん、
吉岡秀隆さん等の演技派で占めていて見ごたえのある一作でした。
邦画は陰湿で結末もあやふやすぎるという偏見を持ってたけど
こういうスカッとした終わり方するなら邦画ファンになりそうだなぁ♪